The story of Cipherail ― 白狼神の使い

白狼神の使い


 彼の名は、テル。彼は風。
 語るべき物語を、探し求めている。

     ***

 何か固く細いもので頬を突つかれ、青年は重い瞼をゆっくりと開いた。すると、霧が立ち込める薄暗い視界の中で、十歳前後の少年がひとり、驚いた顔でこちらを見ていた。彼の手には、幾枚か葉の付いた細い枝が握られている。
「あ……生きてた」
 少年はそう呟くと、枝を軽く放り投げ、さっと立ち上がった。
「あんた、誰? ここの人間じゃないよね。そんなところで何やってんの?」
「わ、私は――あっ!? ぶっ……」
 青年は答えるために起き上がろうとしたが、なぜか手に込めた力が地中に吸い込まれ、おかげで濡れ湿った地面から口の中へ侵入してきた泥水を飲む羽目になってしまった。
「あ、死にたくなかったら、ジタバタしない方がいいよ。ウソかホントか、この沼、底なしだって言うし。一応、死人も出たことあるらしいから」
 少年の淡々とした説明に、青年は泥中で背筋を凍らせた。思わず、泥を掻き回していた手足を止める。
「わ、私の名前は、テル。き、ききき、きみの名前はっ?」
 切羽詰まった声を発するテルを、少年はおもしろそうに見下ろした。
「ラスティンだけど」
「そ、そうか、ラスティンか。ラ、ラスティン、後生だから、私を助けてくれると嬉しい。こ、ここから出してくれっ」
「別にいいけど……」
 ラスティン少年は何の屈託もなく頷いたが、一瞬、宙に視線を放った後、再びテルを見た。
「その前にひとつ、あんたに訊きたいことがあるんだけど、いい?」
 命が助かるのなら、質問のひとつやふたつ、何ほどのこともない。テルは浮かんでいられるのが不思議なほどゆっくりとした立ち泳ぎで疲弊しながら、にこやかに頷いてみせた。すると、ラスティンは急に真摯な表情になって、彼を見つめた。
「テル、あんた……白狼神の使い……?」
「ハクロウ……? いや、違うが……」
 すると、少年はあからさまに残念そうな顔をして俯いた。
「そっか……」
 これから手を借りようかという人間の機嫌を損ねてしまい、テルは慌てた。
「ラスティン、すまない。だが、嘘を吐くわけには――」
「なに慌ててんの」
 少年は小さく吹き出すと、少し離れた場所に朽ち落ちていた太枝を持って戻ってきた。
「はい、これに掴まって。ヘンに力入れないでよ。オレの方が体重軽いんだから」
「お、大人は近くにいないのか? 誰か呼んで来てくれた方がいいんじゃ……」
 二人とも沼に落ちるという最悪の図を想像したテルが遠慮がちに言うと、ラスティンは瞬間的に眉根を寄せた。
「誰も来やしないよっ。……来たとしても、使いじゃないってんなら、あんた、殺されるかも」
「ころ……!?」
「聖域に忍び込んだよそ者なんて、族長が許すはずないもん。得意の大斧で真っ二つにされちゃうよ。で、どーすんの? 使いじゃないあんたには、オレだって用はないんだけど」
 あどけない顔をしながら、ラスティン少年は厳しかった。
「わ、わかった。お願いだ、ラスティン。その枝を私にくれ。私を助けてくれっ」
 そしてようやく向けられた枝の端を掴むと、テルはラスティンに言われた通り、身体から力を抜いた。
「くぅ……ぬぬぬぬぬっ」
 少年は、沼の縁にあった岩を足掛かりに、顔を真っ赤にして青年の掴む枝を引っ張った。そして、やっとのことで固い地面の上に引きずり出した青年の姿を見て、ひどく迷惑げな叫びを上げたのだった。
「あんた、なんだって服着てないんだよ!?」


 テルが沢の澄んだ水で身体中に付いた泥を洗い流していると、背後で草木の揺れる音がした。はっとして振り返ると、そこから姿を現したのは、ラスティンだった。
「なに、まだ洗い終わってないの?」
「あ、ああ……申し訳ない」
 年上の男が素直に頭を垂れる姿にいかにも面喰らった様子で、ラスティンは困ったようにそっぽを向いた。
「……別に、怒ってるわけじゃ。――あ、これ、着替え」
 ラスティンは、そばの大きな岩の上へ無造作に衣類を掛けた。
「借りても、その、大丈夫なのかい……?」
 年齢が倍は違うだろうテルとラスティンでは、明らかに体格も違う。ということは、衣類の持ち主はラスティンではないのだ。大人を呼べば命に関わると言われたばかりで、その大人の誰かの服を拝借するのは気が引けた。
「大丈夫だよ。それ、フーテン野郎のだから」
「フーテン野郎?」
「いいから早く着なよ。風邪引きたいわけじゃないんでしょ? これ以上、オレに迷惑かけないでよね」
 少年の不機嫌な声に、テルは慌てて最後の泥を洗い流すと、有り難く服を身に着けた。麻と毛皮の粗末な誂えだったが、山中の肌寒い空気を凌ぐ為には、ないよりマシである。
「……で、テルだっけ。あんた、何であんなところにいたのさ」
 岩に腰掛け、足をぶらぶらと揺らせている少年を横目に、テルは顎を摘んだ。
「私もよくは覚えてないんだが……多分、また墜ちた・・・んだと思う」
「落ちた? どこから?」
 沼の周囲に落ちるような高い場所はない。怪訝そうなラスティンに、テルは人差し指を空に向けた。その先を追っていって、ラスティンが薄曇りの空を仰ぐ。
「……は? どーゆーこと?」
「私の性というか……よくあることなんだ」
 それを聞いて、ラスティン少年は思いきり顔を歪めた。
「素っ裸で落ちるのがよくあること? 意味わかんない。あんた、頭大丈夫か?」
 幼い少年に眉を顰められ、テルは情けなくて泣きたくなった。風となり、様々な世界を渡り歩いている彼だが、思えば因果な生き方をしているものだ。
「……まぁ、追剥ぎに遭った行き倒れの旅人だと思ってくれれば」
「旅人だって!?」
 青年の苦し紛れの言い訳に、突然、ラスティンが素っ頓狂な声を上げた。
「ラスティン……?」
「悪いけど、オレ、旅人って嫌いなんだよね」
 言うなり、少年はさっと立ち上がった。
「悪いけど、オレ、もう行くよ。あんたも早いトコこの山を下りた方がいいよ。この沢に沿ってずっと下って行ったら、いつか麓の村に出るから。じゃあね」
「え、ちょっ、待っ……」
 しかし、少年は取り付く島もなく、森の中へと消えてしまった。
「参ったな……。ああ、ここがどこだか、訊きそびれてしまった」
 小さく溜め息を吐くと、テルはそのまま岩にもたれかかった。とりあえず水がそばにあれば、命の危険は当面ないだろう。
「さて、これからどうしたものか……」
 当てのない旅の身の上で、歩を進めるための目的を探すのは、楽しみでもあるが苦しみでもある。ラスティンの言い残した通り、沢を下るのもひとつの策だろう。しかし、テル自身はそうしたくなかった。彼がこの地に落とされたのには、何か理由があるように思えたからだ。
 その時、自分に忍び寄るものに気付いて、テルは顔をしかめた。
「霧が……」
 先程の沼でも出ていたが、今回はそれを上回る濃さで辺りを包もうとしていた。
「これは困ったな。――いや、困っている暇はないか。仕方ない。ラスティンを探して、もう一度頭を下げよう」
 旅人と言ってなぜか嫌われてしまったが、個人的に嫌われたわけではない――そう前向きに考えて、テルはラスティンが消えた方向へと足を踏み出した。

     ***

 陽の射さない薄曇りで時間がよくわからなかったのだが、どうやらラスティンと出会ったのは夕刻だったらしい。その証拠に、テルはあっという間に霧などどうでもいいと思えるほどの漆黒の闇に包まれてしまった。
 最初は手探りで歩いていたテルだったが、途中、石段のようなものに出くわした。人に見咎められる危険性もあったが、背に腹は代えられぬと、それを上った。おかげで、思ったより早く、開けた草地のような場所に出ることができた。立ち込めた霧の向こうに数基の篝火があり、時折、黒い人影が行き交っているのが見えた。
「大きい村だと厄介だな……。ラスティンの家はどこだろう」
 ひと回りも年齢の違う少年を勝手に当てにして、テルは再び歩き始めた。できるだけ家の裏を通り、窓から漏れ聞こえる会話にラスティンを探す。
 そして三軒目、テルが窓の真下に身を潜めた時だった。ふいに耳元で低い唸り声がして、振り向くと、大きな犬がテルを見据えていた。
「………!」
 テルは喉を鳴らして息を飲むと、静かに腰を上げた。そして低い姿勢のまま、後退りする。その様子を、犬は唸りつつじっと見つめていた。テルは息を殺したまま、家の角を曲がった。犬が追って来ないことを確認して、表へと続く通路で大きく息を吐き出す。しかし、それはこれから始まることの序章でしかなかったようだ。
 気を取り直したテルが、霧に紛れれば大丈夫だろうと、とりあえず表の通りに出ようとした時だった。なんと家々の前の軒下に、必ず犬が数頭ずつ集まっているのを目にしたのである。
(な、なんでこんなに犬が……!? ここは犬の村か!?)
 動揺したテルが足を一歩引いた時、聞き覚えのある低い唸り声が耳を打った。恐る恐る振り返れば、案の定、そこには先程の大きな犬が佇んでいた。
 テルが身を翻して走り出すのと、犬が吠えるのとが同時だった。急に飛び出してきた見慣れぬ人間――それもよそ者の匂いを振り撒いている――を、軒下の犬たちが見咎め、追跡しないはずはない。どんどんと数を増やす獣の足音と呼吸音に、テルは必死で見知らぬ場所を駆け抜けた。決して良くない足場で、よくぞ転ばずにいられるものだと自分で感心する。が、これだけ犬たちが騒いでいると、人間たちも表へ出て来るというものだ。
「何だい、何事だい?」
「狼ども、何を騒いでいるんだ。何か獲物が出たのか?」
 奇跡的に耳に届いた村人の話し声に、テルはぎょっとした。
(狼!? 犬じゃなくて!?)
 一体どこまで逃げれば諦めてくれるのか、狼たちは非常にしつこかった。
(わ、私を喰い殺すまで……!?)
 自分の想像に自分でゾッとした時、突如、背中に鈍い衝撃を感じた。振り返ると、そこに兎の骸がふたつ、転がっていた。
「何で……」
 思わずひとりごちた時、いきなり横合いから腕を引っ張られた。
「なにボケッとしてるんだっ。早く逃げるんだよ!」
 そのまま引きずられるように走り出す。ちらと背後を顧れば、兎に群がる狼たちの影が、霧に大きく浮かび上がっていた。


「あんた、バカか!?」
 石造りの小さな家の前に辿り着くなり叫んだラスティンを、テルはそれこそ狼の前に引き出された兎のように縮こまって見つめた。最早どちらが大人だかわからない。
「せっかくさっさと山を下りろって忠告してやったのに、よりにもよって村のド真ん中で何やってんのさ!」
「それが……霧で道が分からなくなって……」
「わからないんなら、どうしてここまで上がって来れたんだよ! まったく、信じられないよ!」
 喧々囂々たる非難にテルが一層小さくなっていると、ふいに家の扉が開いた。そこから現れたのは、三十過ぎの美しい女性だった。
「ラスティン、もうその辺にしなさいな。もとはと言えば、あなたがテルさんを放り出したのがいけないのでしょう?」
「だって、母さん――」
「服を貸してあげたのなら、一晩くらいお世話してあげてもいいでしょうに」
 言うと、彼女は、テルに向かってにこやかに微笑んだ。
「この子の母で、セラーヌといいます。話は聞きました。テルさん、狭いですけど、どうぞお入り下さいな」
 姿もさることながら、その声も天女のように美しい女性だった。テルは思わず赤面しながら、深く頭を下げた。
「だけど、一晩くらいって、テルのせいで、二日分の食糧が吹っ飛んだんだよ? あの兎捕るの、苦労したんだからっ」
 どかどかと家に入り、尚も不平を鳴らす息子を、セラーヌが軽く睨む。
「ラスティン、いい加減になさい。父さんだって、どこかの家にこんなふうにお世話になっている時もあるんだから――」
「だから旅人なんか嫌いなんだよ! だいたい何でフーテン野郎のために、オレや母さんがいきなり迷惑かけられるのをガマンしなきゃならないのさ! そんなのおかしいよ!」
 ラスティンは地団駄を踏んで喚き倒すと、そのまま家を飛び出してしまった。残された二人の間に、気まずい雰囲気が漂う。と、セラーヌが口を開いた。
「テルさん、嫌な思いをさせてしまってごめんなさいね。あの子のことは気にしないで、さあ、温かいうちに召し上がって下さいな」
 セラーヌは、火に掛けてあった小さな鍋から、湯気の立った汁を椀に注ぎ、テルに差し出した。
「あ、いえ、こちらこそ、ご迷惑を……」
 テルは恐縮しながら受け取った後、己の服を摘んだ。
「あの、これはご主人の……?」
「あ、はい。しまっていた箱が開いていて、それであの子を問い詰めてあなたのことを」
「勝手にお借りしてしまってすみません」
「いえ。たまには風を通してやらないと、服も傷むというものです」
 本当に風が着ているとはつゆ知らず、セラーヌが微笑む。テルはさらに申し訳なく思いながら、訊くなら今しかないと、話題の『フーテン野郎』について口にした。
「あの……ご主人は今、どちらに……?」
「さあ……。旅の空の下、としか……。私と出逢う前から、旅をしていたものですから」
「そうですか……」
 妻子のある身で長い間旅を続けているのは、何か余程の理由でもあるのだろうか。が、
「テルさんは、どうして旅を?」
 逆に問われて、テルは苦笑した。
「……なぜでしょうね。わかりません。気付いたら、旅をしていたものですから」
「なぜ上の沼にいたのかも憶えてないんですってね。ふふ、おもしろい人」
 この母子に、自分も余程変わった人間だと思われていることだろう。テルはまた赤面しながら、気になっていたことを尋ねた。
「あ、あの、その沼のことですが……せ、聖域だそうですね。よそ者が聖域に入ったりして、殺される、と……」
 すると、セラーヌはわずかに表情を翳らせて、くべていた薪を崩した。炎が鳴りを潜め、炭となった薪が赤々と輝く。
「殺す……は大袈裟かもしれませんが、下手をすると、それに近いことがあるかもしれません。族長は厳しい方ですから……。あ、でも、心配しないで下さい。テルさんのことは、決して言ったりしませんから」
「ありがとうございます。でも……セラーヌさんは、よそ者の私が聖域を犯したことに腹が立たないのですか?」
 しかし、セラーヌは静かに首を振った。
「私は……私も、よそ者ですから。私、外から嫁いできたんです」
「え? あ、そうだったんですか……」
「さあ、話ばかりでもなんですから、どうぞ召し上がって下さい」
 セラーヌに促され、テルは匙で掬った汁を飲んだ。熱い液体が、腑に染み渡っていく。
「よそ者」という言葉は、この村に来てから長いセラーヌにとっても傷になり得るのだろう。故意ではないにしても、余計なことを訊いてしまったと、テルは心の中で詫びの言葉を呟いた。


 食事を終えた後、テルはなかなか戻って来ないラスティンを探しに出かけた。セラーヌによると、裏の崖下にいるだろうということだったので、迷子になる心配はないと思ったのだ。母子の家は、なぜか村の集落からだいぶ離れた場所にあったので、他の村人に出くわすことはなさそうだった。
 満たされた腹を抱え、テルは手造りの石段を用心して降りながら、溜め息を吐いた。
(それにしても、まさか狼の村だったとはな……)
 先ほどセラーヌから聞いた話では、ここはサイファエールという王国らしい。その南東に位置するこのエルジャス山の人々は、国内でも珍しく、土着の神、白狼神を崇め、狼と寝食を共にしているのだという。テルが溺れた沼は、その白狼神の祠がある場所で、祭事の時以外は立ち入り禁止になっているということだった。
(普段は立ち入り禁止だと言うなら、ラスティンだって見付かったらまずかったんじゃないのか? 何で村の禁を犯して、あそこにいたんだろう……)
 それに、もうひとつ気になることがあった。他の家々には狼がたくさんいたというのに――恐ろしいことに――、ラスティンの家には一頭もいなかったのだ。
(村八分……ってところか。こんな寂しい場所に、母子たった二人で……。ラスティンが父親に腹を立てるのも無理ないか……)
 そんなことを考えていた時、ふいに足下の地面が動いたように思った。ぎくっとして足を止めると、二匹の細長い生き物が、のたうち回りながら足下で跳ねていた。
「へっ蛇……!?」
 テルは驚いて足を引いた。が、その場所が悪く、湿った石に足を滑らせ、ものの見事にひっくり返ってしまった。宙に、枯れ葉が舞い上がる。
「いっ……痛たたた……」
 のろのろと起き上がったテルが、打ち付けた腰をさすっていると、彼の前に小さな人影が立った。
「ラ、ラスティン……」
 テルがほっとしてその名を呼ぶと、少年は盛大な溜め息を漏らした。
「そんなとこで何やってんの? 邪魔なんだけど」
「邪魔……?」
 テルが惚けていると、ラスティンが手にしていた縄のようなものを引っ張った。瞬間、テルは再びひっくり返ってしまった。
「なにウロウロしてんだよ。せっかく助けてやったのに、また狼たちに追いかけられたいわけ?」
「い、いや、そういうわけじゃ……」
 これほど自分に失望したことがかつてあっただろうか。ラスティンの握る蔦を蛇と勘違いして、挙げ句にその上にひっくり返ってしまっていたのだ。
「セラーヌさんが心配してるよ。もう家へ戻ったら――」
「誰のせいだよ」
 すかさず切り返されて、テルは眉尻を下げた。
「す、すまない……」
「あんた、ホンットに鈍くさいね」
「返す言葉もない……」
「あーあ。なんであんたなんか見付けちゃったんだろ」
 テルが尻に敷いたせいで絡まってしまった蔓を、ラスティンは鞭のように振って伸ばしている。それを眺めながら、テルは余計な詮索をするまいと思ったことをもう忘れて、疑問解決の好機に身を委ねた。
「ラスティンは……あそこで何してたんだい? セラーヌさんに聞いたけど、聖域は普段、立ち入り禁止なんだって?」
「べっ別に、あんたに関係ないだろっ」
 テルから思いきり顔を背けたラスティンだったが、次の瞬間には恐ろしい形相でテルを振り返った。
「――まさか、母さんに余計なこと言わなかっただろうね!?」
「余計なこと?」
「つ、使いのこと……」
「ああ……。言ってないよ、大丈夫」
「な、ならいいけど」
 テルは首を傾げた。
「……その『使い』って、何なんだい……?」
「使いは使いさ。白狼神の。村のみんなに伴侶を与えてくれるんだ」
「伴侶?」
 伴侶とは、結婚相手のことだろうか。しかし、ラスティンの年齢でそれを気にするには、いくら何でも早いような気がする。
 さらに尋ねようとしてテルがラスティンを見ると、少年は振りすぎて生け垣に引っかかった蔓を苛々しながら解いているところだった。
「……何を作ってるんだい?」
 すると、ラスティンはテルをジロリと睨んだ。
「罠を作ってるんだよっ。誰かさんがせっかくの蓄えをパーにしちゃったからっ」
 墓穴を掘り過ぎて、もはや掘る場所もない。ならばこの際と思い、テルはラスティンの怒りを覚悟して口を開いた。
「罠を仕掛けなくても、あれだけ狼がいたら、兎を捕まえるのは簡単なんじゃないのかい?」
「うちに狼はいなかっただろっ。あの狼たちにはみんなそれぞれ人間の主がいるんだ。だから、狼たちが捕まえた獣は、その主のモノなんだよ」
「じゃあ、なんでラスティンの家には狼がいないんだ? ここは狼の村なんだろう?」
「そ、れは……」
 蔓も解けず、横合いから色々と質問を浴びせられ、少年はとうとう爆発した。
「もう、うるさいなっ。来るんだよっ! そのうち、必ずきっとオレにも来るんだ! もう先に戻っててよ! オレはまだやることがたくさんあるんだ!」
 もはや連れ帰るどころではない。蔓で打たれぬうちにと、テルは慌ててその場を後にした。


 翌朝、人の声に目を覚ましたテルが室内を見回すと、囲炉裏端に丸くなって寝ているラスティンの姿があった。安堵してさらに首を巡らせたところ、セラーヌの姿がないことに気付く。その時、また人の話し声が聞こえてきて、テルは窓からそっと外を様子を窺った。すると、家の前で話し込むセラーヌと十五、六の少年の姿が見えた。
「いいんだって」
「でも……」
「これはこいつが捕まえた分だから、親父も文句は言えないよ」
 そう言う少年の横には、真っ白な毛並みの狼が寄り添っている。彼はセラーヌに肉の塊のようなものを押し付けて、軽く首を竦めてみせた。
「それよりアイツは?」
「今はまだ寝てるわ」
「まだ寝てんの!? オレが叩き起こして――」
「あ、いいのよ、アリオス。あの子、昨日も休むの遅かったから。寝かせておいてやって」
 それを聞いて、アリオスと呼ばれた少年は不満そうに顔を歪め、唇を噛んだ。
「またかよ……。なぁ、叔母さん。叔父貴は今度の祭までには戻って来そうなの?」
「今年は戻って来ると思うわ。去年もそのつもりだったんだけど、間に合わなかったみたい。ほら、お祭の直後に帰って来て、あなたのお父さんと喧嘩してまた出て行ったでしょ」
「ああ、そういえば……」
 少年は、銀髪の頭をがしがしと掻いた。
「叔父貴、今年も間に合わなかったらどうする気だろ。十過ぎて伴侶がいないのって、ラスティンだけだろ? アイツ、あれで結構気にしてると思うんだよね……。なのに親父ときたら、叔父貴が頭下げなきゃ、ラスティンに伴侶やらない気だよ」
「………」
「とにかく、このアリオス様は叔母さんの味方だから、何かあったらいつでも声かけてくれよなっ」
「ありがとう、アリオス。あなたには本当に感謝してるわ」
 それににかっと笑うと、アリオスという少年は颯爽と朝靄の中へ消えていった。テルは、ラスティンを起こさないよう、そっと起き上がると、表へと出た。
「あ、テルさん。おはようございます」
 それへ小さく会釈すると、テルは少年の消えた方を見て言った。
「あの……さっきの子は……?」
「あ、聞こえました? 主人の甥っ子です。昨日の狼たちの騒ぎで、兎奪られたのがうちじゃないかって、代わりに鹿肉を」
 どうやら村人は、先頭のテルには気が付かなかったらしい。それもこれも、ラスティンが助けてくれたからに他ならないが。
「気の利く少年ですね」
「ええ、本当に」
 そう言って、セラーヌは鹿肉を大切そうに抱え直した。
「あの……セラーヌさん。ちょっと訊いてもいいですか?」
 テルは、昨晩、ラスティンに聞きそびれてしまったことを尋ねた。
「何でしょう?」
「あの、『伴侶』って……?」
「ああ、狼のことです。この村では、一人前と認められた者には、白狼神から伴侶――つまり、狼が遣わされるんです。だから、たくさん狼が」
「なるほど……」
「互いに伴侶となった者と狼は、一心同体、どちらかが命を落とすまで、ずっと共にあるのだそうです」
 テルは首を傾げた。
「セラーヌさんの伴侶は、死んでしまったのですか?」
「いえ、私には最初からいません。昨夜も言いましたが、私は外から嫁いで来たので……」
「あっ、そうでしたか……」
 またしても古傷に塩を塗ってしまったとテルは身を縮めたが、セラーヌは気にした様子もなく、言を次いだ。
いにしえからずっと続いてきた習わしですから、ラスティンにも今度のお祭りで伴侶が来てくれればと思うんですけど、昔から主人と白狼神の使い役を務める義兄との仲が悪くて、今回もどうなるか……」
 思わぬことを耳にして、テルは目を丸めた。
「えっ、使い役はもう決まっているんですか!?」
「えっ? ええ、恒例のことですから……。でも、それが何か……」
「――あっ、いえ。何でも……」
 頭に浮かんだのは、もちろんラスティンのことだった。彼は最初に出会った時、テルに白狼神の使いかと尋ねてきたのだ。それは、使いを誰が務めるか――もっと言えば、誰かが務めるものということさえ知らなかったからだろう。
『来るんだよっ! そのうち、必ずきっとオレにも来るんだ!』
 昨晩、ラスティンは必死の形相で、そうテルに食ってかかった。禁を犯して聖域に踏み込んだのも、すべては伴侶を得たいというその願いからだと考えれば説明が付く。そうなると、先ほどのアリオス少年の言葉が胸に痛かった。
『――親父ときたら、叔父貴が頭下げなきゃ、ラスティンに伴侶やらない気だよ』
 テルは小さく溜め息を吐くと、再びセラーヌを見た。
「あの、そのお祭りはいつ……?」
「もうすぐ、五日後です。――あ、テルさんもお急ぎの旅でなければ、見て行かれます?」
「えっ、でも――」
 よそ者が、村人から隠れてどうやって祭事を見物するというのか。それに、別の大きな問題もある。
「私とご一緒でも宜しければ」
 セラーヌの微笑みに、テルはやり切れない思いで唇を噛んだ。
「……私の旅心は、困ったことに風のように気ままでして……。五日後、ラスティンが伴侶を得るまでいられればいいのですが……」
 だが、その真意がセラーヌへ伝わるはずもない。
「ふふ。テルさんって、本当におもしろい人」
 セラーヌはくすくす笑いながら、家の中へと入っていった。

     ***

 それからの四日間、テルはラスティンにいびり倒されながら、小さな石造りの家で時を過ごした。よそ者を嫌う村人を警戒し、外の空気を吸えるのは夜霧の中でだけだったが、青年は意外にもこの窮屈な生活が気に入っていた。ひとつには、結局、あれやこれやと世話を焼いてくれるラスティンがおもしろかったのだ。――うっかりそれを口にしようものなら、狼の餌にされることは明白だが。
 だが、前夜祭の準備を見に行くというラスティンを見送るため、久々に陽の当たる庭に出た時、ふいに頬を撫でた風が胸の中に小さな旋風を巻き起こした。テルの焦燥感とは逆に、それはすぐに消えてしまったが、彼は母子との別れが近付いていることを悟った。


 ついに本祭の夜を迎えた。
 日没とともに沼を取り巻く篝火へ火が点され、溢れ返った人と狼に、聖域はいつになく熱気に包まれていた。
 テルは、セラーヌに付いて村人の輪の一番外側に立っていた。昼間のような明るさの中で、ともすればよそ者と判りそうなものだが、今は他の村人同様、狼の仮面を被っているので、正体を知られる心配はない。一人一頭が原則の狼も、繋がれているわけではないので、人間たちの間を好き勝手に動き回っており、ゆえにそばに伴侶が控えていなくても、疑われることはないのだった。
 ラスティンは、先日、鹿肉を持ってきた少年に無理矢理連れて行かれたので、今は別行動だった。やはり仮面を被っているので確かとは判りかねるが、どうも白狼神の祠に近い場所にいるようだった。おそらくその小さな胸は、伴侶を得られるかという大きな期待で弾んでいるに違いない。しかし、結局、ラスティンの父は、この日この時までに帰って来ていない。昨年、遅れて帰ってきて揉めたというから、今年は帰れそうにない日程だった場合、早々に帰郷を諦めてしまったのかもしれない。大人の事情による運命を、テル自身がラスティンに教えることは憚られた。彼はいつ消えるともしれない身の上である。無責任なことは言えなかった。
 族長を務める兄と昔から折り合いが悪く、よそ者のセラーヌを娶ったことで、その溝が決定的になってしまった――そのことを淡々と語ったセラーヌが、テルには不思議だった。彼女は、夫にさえ放っておかれ、村八分の孤独な生活を送りながら、確かに幸せを噛みしめているのだ。
(何がセラーヌさんにそう思わせるのだろう……)
 しかしそれは、一介の風でしかないテルには、わかりようもない事情だった。
 やがて、黒い木々の向こう、珍しく澄んだ夜空に満月が見え始めた頃、族長と思われる壮年の男の野太い声が、聖域中に響き渡った。白狼神が先祖代々に与えた加護に感謝し、自分たちにもさらにそれが与えられんことを祈る文言が、火の爆ぜる音とともに続く。
(加護と繁栄を願うなら、族長として公平であるべきだろうにな……)
 テルがそんなことを考えてぼんやりしている間に、祭はどんどんと進んでいった。供物を納める儀式、舞や歌を捧げる儀式、白狼神の子孫であり化身でもある狼たちへの供物の配布――。
 村人たちにも食事や酒が振る舞われ、辺りは祭にふさわしく賑やかになっていった。
 ふいに村人たちが歓声を上げた。この頃には聖域の端に退いていたテルが、セラーヌが指し示した方を見ると、木ほどに高い車輪の付いた櫓が引き出されて来た。最上段は、大人の男の背丈を五人分ほど積んだ高さになる。そこへ、族長によく似た、しかし随分若い男が身も軽くよじ登った。
「いいぞ、若狼!」
 あちらこちらから上がる掛け声に、テルが首を傾げると、セラーヌが仮面越しにそっと教えてくれた。
「族長の息子です。アリオスの上のお兄さん。使い役……族長から受け継いだみたいですね」
「ああ、どうりで……。で、あの櫓は何なんです?」
「見ていればわかりますよ」
 それもそうだとテルが視線を櫓へ戻すと、若狼と呼ばれた青年は、下から滑車を使って上げられた籠を受け取り、足下に置いた。そして、こちらは朗々たる声を発す。
「これより、今年の伴侶得の儀式を行う! 名を呼ばれた者は、速やかにここまで上り、己の勇気を試せ! そうすれば、必ずや白狼神から伴侶が授けられるだろう!」
 それを聞いて、テルは目を丸めてセラーヌを振り返った。
「えっ……勇気を試せって、まさか……」
「ええ。あそこの上から、沼に向かって飛び込むんです」
「でっでも、この沼って、底なしなんじゃ……」
「飛ぶのはほとんど子どもですから、一応、沼から引き上げるための命綱は付けることになっています」
「………」
 いくら命綱があっても、飛び込む場所が高ければ、それだけ泥に埋まってしまう。普通に飛び込むだけでも恐ろしいのに、そこが底なし沼とあっては、美しいセラーヌに懇願されたとしてもできないだろうとテルは思った。
 さて、一人目に名を呼ばれたのは、ラスティンと同じ年の頃の少女だった。彼女は若狼と同じように櫓を上ると、手早く命綱を腰に結んだ。準備が整った後、彼女は一度、下を覗き込む様子を見せた。村人たちが固唾を飲んで見守る中、少女は櫓の上で二度往来を繰り返し、そして三度の深呼吸の後、何の躊躇もなく床を蹴った。少女は頭を上に、足から泥に突っ込んだ。
 途端、少女の勇気を称え、割れんばかりの拍手と喝采が沸き起こる。それへ、泥まみれになりながら、少女が手を振って応えた。そして、白狼神から伴侶が遣わされる。
 若狼が足下に置いていた籠から何かを拾い上げ、少女の頭上へ放った。腕を大きく広げた少女は、それを歓喜の表情で迎え、そして愛しそうに抱きしめた。
「今のは、狼の子ども……?」
 テルが尋ねると、セラーヌは小さく頷いた。
「今年生まれた仔狼です」
「はぁ……白狼神の使いは、白狼神の化身に対して、随分と手荒な真似をするんですね」
 それへ、セラーヌはただ肩を竦めただけだった。
 その後、少年が二人、少女が一人、その名を呼ばれ、己の恐怖心に打ち勝った彼らは、晴れて大人の仲間入りをし、伴侶を得た。
(あの籠に、あと何頭の狼が残っているんだろう……。ラスティンの伴侶もいればいいが……)
 その時、新たに少年の名が呼ばれた。と、同時に、セラーヌが押し殺すように吐息し、テルは彼女を見た。
「どうかしましたか?」
 すると、セラーヌは、意気消沈した様子で言った。
「いま名前を呼ばれた子は、ラスティンより年下の子です。……やっぱり、主人が帰らないことには、どうしようもないようですね……」
「そんな……」
 テルは、篝火を受けて鈍く光る沼を見つめた。
「セラーヌさん。ラスティンとここで初めて会った時、ラスティンは私に白狼神の使いかと訊いてきたんです」
 思えば、母に黙っていろとラスティンが暗に言ったのは、伴侶の与えられぬ母への気遣いと、そして心配をかけたくないという優しさからだったのだろう。
「え?」
「ラスティンは、この儀式のことを、どれくらい知っていたんですか?」
 セラーヌは、形の良い眉を顰めると、記憶を探るように呟いた。
「さ、参加したのは、去年が初めてです。それまでは、聖域に入れてもらえなくて……。でも、その去年も、あの子、祭の途中に熱で倒れてしまって、この儀式の時にはもうここにはいませんでした」
 だから、儀式の段取りも知らず、聖域に忍び込むような真似をしたのだ。
「ずっと……一年間、ずっと伴侶が欲しかったんでしょうね……」
「………」
 見れば、ラスティンはもはや仮面など被ってはいなかった。櫓の袂で、上に昇っていく少年の足裏を、悔しそうに見つめている。そして、追い討ちを掛けるように、その少年が最後の挑戦者であることが若狼から告げられた。
「そうは言っても、ラスティンは族長の甥でしょうに……」
 テルの胸に、小さな怒りが芽生えた時だった。また風が青年の頬を撫で、胸に旋風を巻き起こした。しかし、そこには既に怒りがある。旋風は、その怒りを炎のように煽り、テルの身さえ持ち上げようとした。
「ま、まだだ。待ってくれ……」
 抗えない力にテルが喘いでいると、彼の異変を察したセラーヌが、訝しげに彼の名を呼んだ。それが、テルの注意力を散漫にした。彼の身体から迸った風が、篝火を倒し、櫓を揺する。聖域の各所で、悲鳴が上がった。
「テルさん、しっかりして!」
 セラーヌがテルの腕を掴んだ時だった。沼の周囲でまた悲鳴が上がった。見ると、激しく揺れた櫓の籠から投げ出されたらしく、仔狼が沼の中央に落下して、必死にもがいていた。
 若狼は、やっとのことで上までよじ登ってきた少年に、伴侶となるべきその仔狼を助けるよう促したが、少年は未だに揺らぐ櫓の上で、すっかり怖じ気付いてしまっていた。助けに飛び込むどころか、床にへばり付き、震える始末だ。まだ十にも満たない子どもなので、仕方のないことではあったが。
「白狼神の子を死なせるわけにはいかん! 仔狼を助け出せ!」
 族長が叫ぶと同時に、櫓の中途から沼に飛び込んだ影がある。
「ラ、ラスティン!?」
 アリオスと思われる声に、テルとセラーヌは瞠目した。そしてセラーヌが、脱兎のごとく沼に向かって突進する。ラスティンは命綱を付けていない。母として子の身を何よりも案じるのは当然のことだった。一方で、テルは自分の身をその場に縫い付けておくのが精一杯だった。いや、所詮は抗えぬ運命であり、抑え付けているのではなく、ただそのときが完全に訪れていないだけなのだろう。
「ラスティン! ラスティン!」
 母の叫びが響き渡る中、ラスティンは無理矢理に泳いで、溺れかけていた仔狼をなんとか掬い上げることに成功した。しかし、今や彼の腕にも身体にも泥が執拗にへばり付き、その身動きを取れなくしていた。
 セラーヌが喉を詰まらせて声を失った時、信じられないほどの静けさが辺りに満ちていた。誰も――ただの一人も、溺れ死にかけた少年を助けようと動いていなかったのだ。それに気付いた瞬間、テルは内なる力に抗うのを止めた。そして、小さな旋風が大きな竜巻に変わろうとするのへ心身を委ねる。
 聖域に、悲鳴と怒号が満ちた。地面に蹲る村人の上へ、容赦なく泥の礫が降りかかる。櫓はもはやバラバラになって倒れ、白狼神の祠は根元からひっくり返った。

     ***

 ラスティンは、夢を見ている気分だった。なぜなら、彼の目の前に、道ができていたからだ。今や風の力で真っ二つに割れた沼は、そのごつごつとした底を少年の眼前に晒していた。
 ラスティンは、仔狼をしっかりと抱いて、母の待つ岸辺へと上がった。彼の足が泥から離れた途端、沼の泥は崩れるように混ざり合い、聖域に普段の静けさが戻った。
「母さん……」
 息子の気遣うような声に、セラーヌは呆然と呟いた。
「テルさんこそ、真実、白狼神の使いだったんじゃ……」
 その時、二人のいる反対側で、泥をかぶったアリオスが叫んだ。
「勇気あるラスティンに、白狼神が伴侶を遣わされたぞ!」
 その宣言に抗える者は、誰一人としていなかった。
 ラスティンは、すぐさまその仔狼にアグラスと名を付けた。『風と共にアーグ・ラス』―― 一年間、考えに考え抜いた名前だった。
 アグラスの黒い毛を、頼りなげな夜風が撫でていった。

【 了 】

※ 競作企画「テルの物語」参加作品


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